茶葉の形状とサイズから読み解く、紅茶の奥深い世界
紅茶の「グレード」とは、品質の良し悪しではなく、主に茶葉の形状や大きさ(サイズ)を示す分類です。茶葉の大きさが不揃いだと、お湯を注いだ時に味や香りの抽出が均一にならないため、製造工程の最後にふるいにかけられ、大きさごとに分けられます。
これにより、それぞれの茶葉の特性に合った淹れ方ができ、美味しさを最大限に引き出すことができます。本ガイドでは、オーソドックス製法とCTC製法の違い、産地ごとのグレード、そしてクローナルと実生の味わいの違いまで、紅茶のグレードに関する全てを網羅的に解説します。
紅茶の茶葉は、その製造方法によって大きく2種類に分けられます

伝統的な製法で、茶葉を丁寧に揉んで作られます。茶葉本来の形が残りやすく、産地ごとの繊細な香りや風味を最大限に引き出します。ダージリンやニルギリなど、香りを楽しむ高級茶の多くがこの製法です。
萎凋(しおらせる)→ 揉捻(もむ)→ 酸化発酵 → 乾燥
茶葉の形が残り、繊細な風味と香り。産地の個性が際立つ。
Crush(押しつぶす)、Tear(引き裂く)、Curl(丸める)の頭文字を取った近代的な製法。専用の機械で茶葉を細かく砕き、丸い粒状(ペレット状)に加工します。短時間で色と味を濃く抽出できるため、ミルクティーやティーバッグに最適です。
萎凋 → ローターバン(細かくねじ切る)→ CTC機 → 酸化発酵 → 乾燥
短時間で濃い味わいと色を抽出。味や香りが均一になりやすい。
CTC機にかける前の予備処理として使われる機械。茶葉をあらかじめ揉みながら細かくねじ切り、細胞組織を効率よく破壊します。これにより、次のCTC機での処理がより効率的かつ均一に進みます。
現在、インド紅茶の約90%、アフリカの紅茶のほぼ100%がCTC製法で作られています。
茶葉の部位や大きさによって細かく分類されます

| グレード | 名称 | 特徴 |
|---|---|---|
| OP | オレンジ・ペコー | 7~11mmの細長く大きな茶葉。豊かな香りが特徴。明るい水色。 |
| P | ペコー | OPより少し短く、太めの茶葉。 |
| BOP | ブロークン・オレンジ・ペコー | OPを2~4mmに細かく砕いたもの。市販品の主流で、味・香り・水色のバランスが良い。 |
| BOPF | ブロークン・オレンジ・ペコー・ファニングス | BOPよりさらに細かい1~2mmの茶葉。短時間で濃く抽出でき、上級品のティーバッグに使われる。 |
| F | ファニングス | BOPFとほぼ同じ大きさだが、より平たく、水色や渋みが強い傾向。 |
| D | ダスト | 1mm以下の最も細かい粉状の茶葉。抽出が早く、良質なものは高値で取引される。 |
「ダスト(Dust)」は単なる「ゴミ」や「残りかす」ではありません。製造工程で生まれる最も細かい茶葉のグレードを指す言葉です。これは茶葉の中心部分や硬い部分などが細かくなったもので、意図せず発生する自然な副産物です。
品質の良いダストは、その強い風味と抽出効率の良さから、オークションで高値で取引されることも珍しくありません。
他の産地にはない複雑なグレード表記が特徴
ダージリンは、その繊細な香りを最大限に引き出すため、オーソドックス製法で作られます。また、他の産地にはない複雑なグレード表記が特徴です。
例:SFTGFOP1 CL
「クローナル種の茶樹から作られた、特に素晴らしいゴールデンチップを豊富に含む最高級グレードのロット」ということを表しています。
粒の大きさによって細かくグレード分けされます
CTC製法で作られた茶葉は、乾燥後にふるいにかけられ、その粒の大きさによって細かくグレード分けされます。サイズの大きい順に並べると、主に以下のようになります。呼称や分類は産地によって多少異なります。
| グレード | 名称 | メッシュ | 特徴 |
|---|---|---|---|
| BOPL | ブロークン・オレンジ・ペコー・ラージ | 6-8穴/インチ | CTCの中では最も大きい粒。香りは良いが、味わいは比較的軽め。 |
| BP | ブロークン・ペコー | 10-14穴/インチ | 最も生産量が多く、一般的なCTCのグレード。しっかりした味わいとコクがある。 |
| BPSM | ブロークン・ペコー・スモール | 12-18穴/インチ | BPより少し小さい粒。より濃厚な味わい。 |
| PF / OF | ペコー・ファニングス / オレンジ・ファニングス | 22穴/インチ | 細かい粒状。抽出が早く、ティーバッグによく使われる。 |
| PD | ペコー・ダスト | 26穴/インチ | PFよりさらに細かい。非常に濃く力強い味わい。 |
| D / D1 | ダスト / ダスト1 | 30穴/インチ | 最も細かい粉状のグレード。瞬時に濃い水色が出る。 |
※メッシュの穴の数は、1インチあたりの穴の数を示し、数字が大きいほど細かい茶葉を分けられます。
アフリカ最大の紅茶生産国であるケニアは、そのほとんどがCTC製法です。グレードは主にプライマリー(Primary)とセカンダリー(Secondary)に大別されます。
プライマリー選別後、さらに細かく分けられるグレード。F1 (Fannings 1), D (Dust), BMF (Broken Mixed Fannings) などが含まれます。
これらは味もカフェインも非常に強く、特にエジプトなどイスラム圏で好まれる傾向があります。
ケニアの紅茶は、茶園の歴史が比較的新しく茶樹が若いため、クセがなくフレッシュでマイルドな味わいが特徴です。
CTC製法が発明されたアッサムでは、生産量の90%以上がCTCです。そのグレードは、ケニアほど明確にプライマリー/セカンダリーと分かれているわけではなく、より伝統的な呼称が使われることが多いです。
麦芽のような甘い香り(モルティーフレーバー)と、濃厚で力強いコクが最大の特徴です。そのため、ミルクティーやチャイのベースとして世界中で絶大な人気を誇ります。
遺伝子の多様性が生み出す、異なる魅力

| 項目 | 実生(Zairai / Seedling) | クローナル(Clonal / Cultivar) |
|---|---|---|
| 繁殖方法 | 種子から育てる(有性生殖)。 | 優れた母樹の枝を挿し木で増やす(無性生殖・クローン)。 |
| 遺伝子 | 一本一本すべての樹が異なる遺伝子を持つ(人間でいう兄弟姉妹のような関係)。 | 茶園のすべての樹が、遺伝的に全く同一。 |
| 根の構造 | 太く長い主根が地中深くまで伸びる。 | 細く短いひげ根が地表近くに広がる。 |
| 味わいの特徴 | 複雑で奥行きのある味わい。一本一本の樹の個性が混ざり合うため、予測不能なニュアンスが生まれる。ミネラルを地中深くから吸い上げるため、味が厚く、余韻が長くなる傾向がある。 | クリアで一貫性のある味わい。狙った通りの香りがストレートに表現される。ダージリンでは「マスカット」や「花」のような華やかな香りを特徴とする品種が多い。 |
| 香りの特徴 | 穏やかで複合的な香り。 | 品種改良の目的とされる特定の香りが際立つ(例:フルーティー、フローラル)。 |
| 品質の安定性 | 不均一。収穫時期や品質がバラバラになりやすい。 | 均一。常に安定した品質の茶葉を生産できる。 |
| 代表的な産地 | 中国の雲南省など、古くからの茶産地にある古樹園。 | ダージリン、スリランカ、ケニアなど、近代的な茶園管理が行われている産地。 |
クローナルとは、単に「挿し木で増やした品種」という意味以上に、紅茶の品質と個性を決定づける重要な要素です。特定の優れた性質(香り、味、耐病性、収量など)を持つ母樹を選び出し、その枝を切り取って土に挿して発根させる「挿し木(栄養繁殖)」によって増やした、遺伝的に同一な茶樹の集団を指します。
これらのクローナル品種は、単独で使用されることもありますが、複数のクローナルや在来の中国種(チャイナ)とブレンドすることで、より複雑で奥行きのある味わいを生み出すこともあります。
実生は、様々な個性が混ざり合うことで生まれる複雑味と深い余韻が魅力です。ワインで言えば、様々なブドウ品種が混植された古木の畑から造られるフィールドブレンドに近いかもしれません。
クローナルは、特定の優れた個性を引き出すことに特化しており、華やかな香りと安定した品質が魅力です。
どちらが優れているというわけではなく、それぞれに異なる魅力と価値があります。ダージリンでは、しっかりとしたボディと奥行きを求めるなら中国種(実生由来)、華やかな香りを楽しみたいならクローナル、といった選び方ができます。

英国の伝統を受け継ぐASHBYS(アシュビィズ)は、1850年創業以来、最高品質の紅茶をお届けしています。ダージリン、アッサム、セイロンなど、世界各地から厳選された茶葉を、日本で輸入加工販売しております。
BASICシリーズからFLAVOURED GARDENまで、多彩なラインナップをご用意しています。
インド、スリランカ、ケニア、中国など、世界各地の最高品質の茶葉を使用しています。
ドイツで着香されたフレーバードティーを日本で丁寧に加工し、お届けしています。
また、サラトナとしてスリランカやインドから紅茶を輸入し、ブレンドや着香して加工して卸や小売の販売をしております。
紅茶のグレードは品質ではなく茶葉のサイズと形状を示すものです。
製法はオーソドックスとCTCの2種類が主流で、それぞれに独自のグレード分類があります。
BOPが市販品の主流で、BOPFはさらに細かいティーバッグ用のサイズです。
ダージリンにはFTGFOPなど独自の複雑なグレードが存在し、茶樹の品種(CH/CL)も表記されることがあります。
OPやPといった大きいサイズの茶葉が必ずしも高級というわけではなく、それぞれのグレードに合った楽しみ方があるのが紅茶の奥深さです。