紅茶のグレード
完全ガイド

茶葉の形状とサイズから読み解く、紅茶の奥深い世界

英国紅茶の伝統を受け継ぐ ASHBYS OF LONDON がお届けする専門知識
はじめに

紅茶の「グレード」とは、品質の良し悪しではなく、主に茶葉の形状や大きさ(サイズ)を示す分類です。茶葉の大きさが不揃いだと、お湯を注いだ時に味や香りの抽出が均一にならないため、製造工程の最後にふるいにかけられ、大きさごとに分けられます。

これにより、それぞれの茶葉の特性に合った淹れ方ができ、美味しさを最大限に引き出すことができます。本ガイドでは、オーソドックス製法とCTC製法の違い、産地ごとのグレード、そしてクローナルと実生の味わいの違いまで、紅茶のグレードに関する全てを網羅的に解説します。

すべての基本「2つの製法」

紅茶の茶葉は、その製造方法によって大きく2種類に分けられます

オーソドックス製法とCTC製法の比較図
オーソドックス製法
伝統的な製法で茶葉本来の個性を引き出す

伝統的な製法で、茶葉を丁寧に揉んで作られます。茶葉本来の形が残りやすく、産地ごとの繊細な香りや風味を最大限に引き出します。ダージリンやニルギリなど、香りを楽しむ高級茶の多くがこの製法です。

工程

萎凋(しおらせる)→ 揉捻(もむ)→ 酸化発酵 → 乾燥

特徴

茶葉の形が残り、繊細な風味と香り。産地の個性が際立つ。

CTC製法
近代的な製法で効率的に濃厚な味わいを生み出す

Crush(押しつぶす)、Tear(引き裂く)、Curl(丸める)の頭文字を取った近代的な製法。専用の機械で茶葉を細かく砕き、丸い粒状(ペレット状)に加工します。短時間で色と味を濃く抽出できるため、ミルクティーやティーバッグに最適です。

工程

萎凋 → ローターバン(細かくねじ切る)→ CTC機 → 酸化発酵 → 乾燥

特徴

短時間で濃い味わいと色を抽出。味や香りが均一になりやすい。

ローターバン(Rotorvane)とは

CTC機にかける前の予備処理として使われる機械。茶葉をあらかじめ揉みながら細かくねじ切り、細胞組織を効率よく破壊します。これにより、次のCTC機での処理がより効率的かつ均一に進みます。

現在、インド紅茶の約90%、アフリカの紅茶のほぼ100%がCTC製法で作られています。

オーソドックス製法のグレード

茶葉の部位や大きさによって細かく分類されます

茶葉のサイズ比較スケール
グレード名称特徴
OPオレンジ・ペコー7~11mmの細長く大きな茶葉。豊かな香りが特徴。明るい水色。
PペコーOPより少し短く、太めの茶葉。
BOPブロークン・オレンジ・ペコーOPを2~4mmに細かく砕いたもの。市販品の主流で、味・香り・水色のバランスが良い。
BOPFブロークン・オレンジ・ペコー・ファニングスBOPよりさらに細かい1~2mmの茶葉。短時間で濃く抽出でき、上級品のティーバッグに使われる。
FファニングスBOPFとほぼ同じ大きさだが、より平たく、水色や渋みが強い傾向。
Dダスト1mm以下の最も細かい粉状の茶葉。抽出が早く、良質なものは高値で取引される。

グレードのアルファベットの意味

  • T (Tippy): 芯芽(チップ)が多いことを意味します。
  • G (Golden): 金色の芯芽(ゴールデンチップ)が含まれていることを示します。
  • F (Flowery): 花のような香りがあることを意味します。ただし、グレードの最後に付くFは「ファニングス(細かい)」を意味します。
  • S (Special/Fine): 特に素晴らしい品質のものに付けられることがあります。

「ダスト」の再定義と用途

「ダスト(Dust)」は単なる「ゴミ」や「残りかす」ではありません。製造工程で生まれる最も細かい茶葉のグレードを指す言葉です。これは茶葉の中心部分や硬い部分などが細かくなったもので、意図せず発生する自然な副産物です。

主な用途

  • ティーバッグ: 短時間で濃い紅茶が淹れられるため、ティーバッグの主要な原料となります。
  • 業務用・ブレンドの補助剤: 他のグレードの茶葉にブレンドして、水色を濃くしたり、味に力強さを加えたりする「補助剤」として使われます。
  • チャイ用: スパイスと共に煮出すチャイでは、短時間で紅茶の味をしっかり出すためにダストグレードが好まれます。
  • 製菓用: 紅茶の風味を生地に練り込む際に、細かいダストは均一に混ざりやすく便利です。

品質の良いダストは、その強い風味と抽出効率の良さから、オークションで高値で取引されることも珍しくありません。

ダージリン特有のグレード

他の産地にはない複雑なグレード表記が特徴

ダージリンは、その繊細な香りを最大限に引き出すため、オーソドックス製法で作られます。また、他の産地にはない複雑なグレード表記が特徴です。

FOP
Flowery Orange Pekoe
芯芽(チップ)を多く含む、上質で大きい茶葉です。
TGFOP
Tippy Golden Flowery Orange Pekoe
ゴールデンチップを多く含むFOP。アッサムでもよく見られます。
FTGFOP
Fine Tippy Golden Flowery Orange Pekoe
TGFOPの中でも特に上質なもの。
SFTGFOP
Special Fine Tippy Golden Flowery Orange Pekoe
FTGFOPの最高級品。茶園が最高の出来と判断したものに付けられます。

追加表記

  • CH (China): 中国種の茶樹から作られたことを示し、マスカテルフレーバーが特徴です。
  • CL (Clonal): アッサム種系のクローナル(挿し木で増やした優良品種)から作られ、花の香りが特徴です。
  • 1: グレードの後ろに付く数字で、特に優れたロットであることを示します。

例:SFTGFOP1 CL

「クローナル種の茶樹から作られた、特に素晴らしいゴールデンチップを豊富に含む最高級グレードのロット」ということを表しています。

CTC製法のグレード(サイズ)

粒の大きさによって細かくグレード分けされます

CTC製法で作られた茶葉は、乾燥後にふるいにかけられ、その粒の大きさによって細かくグレード分けされます。サイズの大きい順に並べると、主に以下のようになります。呼称や分類は産地によって多少異なります。

グレード名称メッシュ特徴
BOPLブロークン・オレンジ・ペコー・ラージ6-8穴/インチCTCの中では最も大きい粒。香りは良いが、味わいは比較的軽め。
BPブロークン・ペコー10-14穴/インチ最も生産量が多く、一般的なCTCのグレード。しっかりした味わいとコクがある。
BPSMブロークン・ペコー・スモール12-18穴/インチBPより少し小さい粒。より濃厚な味わい。
PF / OFペコー・ファニングス / オレンジ・ファニングス22穴/インチ細かい粒状。抽出が早く、ティーバッグによく使われる。
PDペコー・ダスト26穴/インチPFよりさらに細かい。非常に濃く力強い味わい。
D / D1ダスト / ダスト130穴/インチ最も細かい粉状のグレード。瞬時に濃い水色が出る。

※メッシュの穴の数は、1インチあたりの穴の数を示し、数字が大きいほど細かい茶葉を分けられます。

産地別CTCグレードの特徴

ケニア
アフリカ最大の紅茶生産国

アフリカ最大の紅茶生産国であるケニアは、そのほとんどがCTC製法です。グレードは主にプライマリー(Primary)セカンダリー(Secondary)に大別されます。

プライマリーグレード

  • BP1: 最も粒が大きく、生産量の約10-12%。コクがありつつ、ストレートでも楽しめる。
  • PF1: 生産量が最も多く約60%。日本のティーバッグでは主にこのPF1が使われる。
  • PD: 生産量は約18%。英国などではティーバッグによく使われる。
  • D1: 最も細かい主要グレード。生産量は約5%。

セカンダリーグレード

プライマリー選別後、さらに細かく分けられるグレード。F1 (Fannings 1), D (Dust), BMF (Broken Mixed Fannings) などが含まれます。

これらは味もカフェインも非常に強く、特にエジプトなどイスラム圏で好まれる傾向があります。

ケニアの紅茶は、茶園の歴史が比較的新しく茶樹が若いため、クセがなくフレッシュでマイルドな味わいが特徴です。

アッサム
CTC製法発祥の地

CTC製法が発明されたアッサムでは、生産量の90%以上がCTCです。そのグレードは、ケニアほど明確にプライマリー/セカンダリーと分かれているわけではなく、より伝統的な呼称が使われることが多いです。

主要グレード

  • BOPL: CTCの中では最も大きいサイズ。香りは良いが、味わいは比較的軽め。
  • BP: 一般的なCTCのグレードで、ケニアのBP1に相当。
  • BPSM: BPより少し小さいサイズ。
  • OF: 細かい粒状で、抽出が早く、ティーバッグやチャイ、ロイヤルミルクティーに最適。
  • PD, D: 最も細かい粉状のグレードで、非常に濃厚な味わいと水色が出る。

アッサムCTCの特徴

麦芽のような甘い香り(モルティーフレーバー)と、濃厚で力強いコクが最大の特徴です。そのため、ミルクティーやチャイのベースとして世界中で絶大な人気を誇ります。

「実生(みしょう)」と「クローナル」の味わいの違い

遺伝子の多様性が生み出す、異なる魅力

クローナルと実生の比較図
項目実生(Zairai / Seedling)クローナル(Clonal / Cultivar)
繁殖方法種子から育てる(有性生殖)。優れた母樹の枝を挿し木で増やす(無性生殖・クローン)。
遺伝子一本一本すべての樹が異なる遺伝子を持つ(人間でいう兄弟姉妹のような関係)。茶園のすべての樹が、遺伝的に全く同一。
根の構造太く長い主根が地中深くまで伸びる。細く短いひげ根が地表近くに広がる。
味わいの特徴複雑で奥行きのある味わい。一本一本の樹の個性が混ざり合うため、予測不能なニュアンスが生まれる。ミネラルを地中深くから吸い上げるため、味が厚く、余韻が長くなる傾向がある。クリアで一貫性のある味わい。狙った通りの香りがストレートに表現される。ダージリンでは「マスカット」や「花」のような華やかな香りを特徴とする品種が多い。
香りの特徴穏やかで複合的な香り。品種改良の目的とされる特定の香りが際立つ(例:フルーティー、フローラル)。
品質の安定性不均一。収穫時期や品質がバラバラになりやすい。均一。常に安定した品質の茶葉を生産できる。
代表的な産地中国の雲南省など、古くからの茶産地にある古樹園。ダージリン、スリランカ、ケニアなど、近代的な茶園管理が行われている産地。

クローナルの深掘り

クローナルとは、単に「挿し木で増やした品種」という意味以上に、紅茶の品質と個性を決定づける重要な要素です。特定の優れた性質(香り、味、耐病性、収量など)を持つ母樹を選び出し、その枝を切り取って土に挿して発根させる「挿し木(栄養繁殖)」によって増やした、遺伝的に同一な茶樹の集団を指します。

ダージリンにおける代表的なクローナル品種

  • AV2 (Ambari Vegetative 2): 最も有名で評価の高いクローナルの一つ。長く美しいシルバーチップを持ち、花や果実のような圧倒的に華やかで甘い香りが特徴です。多くの茶園で最高級品に使われています。
  • B157 (Bannockburn 157): バノックバーン茶園由来の品種。品質の高い紅茶を生み出します。
  • P312 (Phoobsering 312): フーブセリン茶園由来の品種。
  • T78: よく知られた品種の一つです。

これらのクローナル品種は、単独で使用されることもありますが、複数のクローナルや在来の中国種(チャイナ)とブレンドすることで、より複雑で奥行きのある味わいを生み出すこともあります。

まとめ

実生は、様々な個性が混ざり合うことで生まれる複雑味と深い余韻が魅力です。ワインで言えば、様々なブドウ品種が混植された古木の畑から造られるフィールドブレンドに近いかもしれません。

クローナルは、特定の優れた個性を引き出すことに特化しており、華やかな香りと安定した品質が魅力です。

どちらが優れているというわけではなく、それぞれに異なる魅力と価値があります。ダージリンでは、しっかりとしたボディと奥行きを求めるなら中国種(実生由来)、華やかな香りを楽しみたいならクローナル、といった選び方ができます。

ASHBYS OF LONDON

英国紅茶の伝統
ASHBYS OF LONDON

英国の伝統を受け継ぐASHBYS(アシュビィズ)は、1850年創業以来、最高品質の紅茶をお届けしています。ダージリン、アッサム、セイロンなど、世界各地から厳選された茶葉を、日本で輸入加工販売しております。

35種類の紅茶

BASICシリーズからFLAVOURED GARDENまで、多彩なラインナップをご用意しています。

厳選された産地

インド、スリランカ、ケニア、中国など、世界各地の最高品質の茶葉を使用しています。

日本での加工

ドイツで着香されたフレーバードティーを日本で丁寧に加工し、お届けしています。

また、サラトナとしてスリランカやインドから紅茶を輸入し、ブレンドや着香して加工して卸や小売の販売をしております。

まとめ

紅茶のグレードは品質ではなく茶葉のサイズと形状を示すものです。

製法はオーソドックスCTCの2種類が主流で、それぞれに独自のグレード分類があります。

BOPが市販品の主流で、BOPFはさらに細かいティーバッグ用のサイズです。

ダージリンにはFTGFOPなど独自の複雑なグレードが存在し、茶樹の品種(CH/CL)も表記されることがあります。

OPやPといった大きいサイズの茶葉が必ずしも高級というわけではなく、それぞれのグレードに合った楽しみ方があるのが紅茶の奥深さです。